【Common Journal vol.14「Banda Coffee&Goods 磯崎泰一さん」】
コモンにまつわる日常の風景や物語をお届けする『Common Journal』。第14回は、2026年7月、東京・三鷹エリアにオープンした「Banda Coffee&Goods」店主、磯崎泰一さんをゲストにお迎えしました。

磯崎泰一|Taichi Isozaki
Banda Coffee&Goods 代表。茨城県出身。ブルーボトルコーヒーが日本へ来日した際に、バリスタとしてのキャリアをスタート。その後、東日本橋「CITAN Hostel」のカフェマネージャーや渋谷「The Room COFFEE & BAR」の立ち上げ、飲食店のプロデュース・コンサルティングなどに携わる。
2026年、東京・三鷹に「Banda Coffee&Goods」をオープン。コーヒー、食、音楽、旅を軸に、人の好奇心や新しい出会いを生む場づくりを行っている。
DJとしても活動し、毎月第二土曜日に渋谷The Roomで開催される「MAGNETiC」にレギュラー出演。DJ KAWASAKI、SHACHO(SOIL&“PIMP”SESSIONS)らと共演するなど、様々なフィールドで活動。
また、サーフィンやスノーボードをはじめ、クライミング、フライフィッシングなど、自然の中で遊び、過ごすことをライフワークとしている。

吉祥寺駅から歩くこと約20分。緑が生い茂り、木陰を渡る風が心地良い井の頭公園を抜けると、住宅街の片隅に一軒のコーヒーショップが見えてきます。

「いずれは自分の店をやりたい」という構想を温めていた磯崎さん。関わっていたプロジェクトが一段落したのを機に、念願の出店を決意したのが2025年上半期のこと。自然が近くに感じられる環境を求めて、東京の三鷹・吉祥寺エリアで店を持ちたいと考えていたそうです。周囲に相談を重ねる中、話はとんとん拍子に。2026年4月に物件を契約し、異例のスピードでオープンに至りました。

訪れたのは平日の10時。満席の店内で次々とオーダーが入ります。スタッフも最小限でのスタートとなり、常に人手が足りない状況が続いているそう。「自分自身もアップアップです(笑)。オープン早々、嬉しい悲鳴ですね」。直前にも、スタッフ募集の投稿をしたばかりだったといいます。

お店のコンセプトは「旅心を刺激する」。店名の「Banda」は、磯崎さんの好きなブラジルのアーティスト、バンダ・ブラック・リオの響きに惹かれてつけたもの。イタリア語やスペイン語では音楽隊、別働隊、仲間といった意味を持ち、メキシコには「バンダ」という音楽ジャンルもあるそうです。「意味を調べたら、いい意味だなと。それで店名に決めました」

磯崎さんは、茨城県東海村という海沿いの町で育ちました。実家は漁業を軸に、鮮魚をメインとする飲食店と、長期滞在者向けのビジネス旅館を経営。生まれたときから人にもてなすことや飲食業に馴染みがあったそうです。
コーヒーの道に進んだきっかけは、師匠である藤岡響さんとの出会いでした。藤岡さんはかつて表参道「CAFÉ KITSUNÉ」や清澄白河「ブルーボトルコーヒー」の立ち上げに参画した、著名なバリスタ。
20代の磯崎さんが地元から東京に遊びに来た際、たまたま立ち寄った「CAFÉ KITSUNÉ」で藤岡さんが淹れたマキアートを飲み、衝撃を受けたといいます。味はもちろん、藤岡さんの所作や立ち居振る舞いの格好良さにも強く惹かれたそうです。後に「コーヒーの道に進みたい」という決意につながりました。

磯崎さんが淹れてくれたのは、コーヒー発祥の地として知られるエチオピア・カッファ地方の豆を使ったマキアート。ジャスミンを思わせる華やかな香りに、シトラスや白桃のような果実味がふわりと広がり、やさしい甘さの奥に紅茶のような余韻が続きます。器はCommonの「デミタス カップ&ソーサー 100ml」。小ぶりなサイズが、この一杯の凝縮された味わいを引き立てていました。

2014年、磯崎さんは藤岡さんに誘われて、ブルーボトルコーヒーへ。晴れてバリスタとして、新たな一歩を踏み出すことに。その後は、東日本橋「Hostel CITAN」のカフェマネージャー、渋谷「The Room COFFEE & BAR」の立ち上げに従事するなど、順調にキャリアを重ねていきます。かつて「CAFÉ KITSUNÉ」で体験した一杯のように、個人の価値観に深く響く瞬間をコーヒーを通して表現したいと考えて活動してきました。

磯崎さんには、もう一つの顔があります。それはDJ。音楽との出会いは中学生の頃、通っていた英会話教室の先生の影響でレゲエに惹かれたことがきっかけでした。お小遣いを握りしめては7インチレコードを買い集める日々。高校生になる頃には、ヒップホップやレアグルーヴを軸にDJとしての活動を始めていました。

Banda Coffee&Goodsは、エスプレッソマシンとDJブースがフラットに並びます。まさに二足の草鞋を履く磯崎さんを投影した空間です。コーヒーの師匠は藤岡響さん、DJの師匠は沖野修也さん。「バリスタとDJ、どちらもエンターテインメントなんです」と磯崎さん。ミキサーを操る手捌きも堂に入ったもので、流れるようにレコードを替えていきます。
DJとしてのレギュラーは、毎月第二土曜日にThe Room(渋谷区桜丘町)で開催される「MAGNETiC」。DJ KAWASAKIさん、SHACHO(SOIL & “Pimp” SESSIONS)らと出演中です。

Banda Coffee&Goodsのオープンにあたり、クリエイティブ面で頼ったのが、Commonのデザイナー・角田陽太さん。真っ先にその名前が浮かんだそうです。もともとDJ仲間としての付き合いがあった二人。まずはロゴマークの制作をお願いしたところ、オープンが差し迫っている中、急ピッチで仕上げてくれたそうです。

角田さんとのやりとりをする中で、業務用の食器の話に。そこで、Tokyo Saikai Showcase(世田谷区瀬田)を訪れました。Commonについては、前職のブルーボトルコーヒーがグラスを採用していたこともあり、ブランドの存在は以前から知っていたとのこと。マグやプレートを実際に手に取ったのは今回が初めてでしたが、「デザインはシンプルなのに、すごく考えられている。とても使いやすい」と実感したそうです。店舗用に導入を決めました。

店内で使用しているカップやグラス類には、お店のロゴがプリントされています。「角田さんのデザインやクリエイティビティは普遍的。そこがとても魅力です」と磯崎さん。ミルクを注ぐ手つきも流れるようで、思わず見とれてしまうほど。

お店では、プレートやカトラリーにもCommonを採用しています。写真は「Banda Avo Toast」。クリーミーなアボカドに、スモーキーなチポトレの辛みと香ばしいナッツクランブル。サワードゥの心地よい酸味が全体を引き締める、コクと食感を楽しむトーストです。
Commonは、いろんな料理で好奇心を刺激できるブランドだと、磯崎さんは感じています。「デザインが尖った食器というより、シンプルだからこそいろんなものをのせられる」。今後は店内でメキシカン料理などのイベントも予定しており、そうしたメニューとの相性の良さにも期待を寄せているそうです。

ジュースやナチュラルワインは、Commonのワイングラスでサーブします。この日のジュースは、長野県飯綱町のりんご農家「山幸農園」のもの。りんごそのものを丸ごと味わうような濃厚さと、爽やかな後味が特徴です。

店内では、オリジナルグッズや書籍も販売しています。Commonのワイングラス、ウォーターグラス、デミタス カップ&ソーサー(100ml)、マグ(330ml)に、お店のロゴを入れたオリジナル仕様です。ロゴもプロダクトデザインも、同じ角田さんによるものです。来店時のお土産におすすめです。

「土着的な素材を積極的に採用し、視覚からもしっかり訴えかける空間づくりを意識しました」という店内は、音の良さも抜群です。スピーカーは、プロオーディオブランド「Taguchi」のものを採用。
今後は、音楽関連のイベントも画策中。「Alter in Saturday」は、「いつもと違う土曜日を、始めてみませんか」をテーマに、国内外で活躍するDJ・セレクターを迎え、午前中から選曲してもらう試験的なイベントです。選曲とコーヒー、ブランチをあわせて楽しんでもらうことを目指しています。

これからについて尋ねると、こんな答えが返ってきました。「飲食の大変さは身に染みてわかっているので、無理に多店舗展開はしません。まずはこの場所で根付かせていきたいです。コーヒーや食だけに限らず、衣食住を今よりもう少し面白くできるようなブランドに育っていったら嬉しいですね」
エスプレッソマシンとDJ機材を自在に操る磯崎さん。素材を吟味し、空間の流れをつくるという点において、DJとバリスタには通じるものがあります。その一端にCommonの製品があることは、喜ばしいことです。心地よい時間が流れる店内へ、ぜひ足を運んでみてください。
Banda Coffee&Goods
住所:東京都三鷹市下連雀1丁目5−7
Instagram:@banda.tokyo
撮影:阿部健 @t_a_b_e